つわものどもが夢の跡

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朝から雨の今日

目覚まし時計を見ればまだ5時でした。

2階の寝室で寝ていた私は、1階の和室に泊っていた母のトイレに行く足音で目が覚めました。

フローリングの廊下に、コツコツと杖を付きながらトイレに歩く母を心配し、階下へ降りて行こうとするや否や、兄が母に付き添う声が聞こえたので、とりあえずひと安心

兄はトイレの前で母をずっと見守っていたようで、その様子も2階の寝室まで聞こえてきました。

普段の実家での母と兄の暮らしが目に見えるようでした。

母がトイレを済ませ、和室に戻ったあと、そのまま母と兄はリビングで話し始めたようで、私もいつもより早かったけどベッドから起きて階段を下りました。

薄暗いリビングで話し続ける母たちをそのままに、私はいつも通り洗濯機を回しながら身支度をして、そのあと3人分の朝ご飯の支度をしました。

トースト
ゆで卵
野菜サラダ
カスピ海ヨーグルト
キウイフルーツ
コーヒー

普段の私の朝食と大して変わらない朝食なのに、母はまた「ごちそう」だと言って珍し気にパクパクと口に運んでいました。

今日の雨は午後から本降りになるというので、午前中に母たちを実家に送りました。

近くのショッピングモールにあるお寿司屋さんのお寿司や手作りパンなど、この街でしか買えないグルメをたくさん買い込んでから実家に向かいました。

実家へ行く途中、案の定、雨足が強くなってきたけど、途中にある道の駅でソフトクリームを3人分買い、車の中で食べました。

母と兄にとっては、私の家に一晩泊っただけのことが、まるで一泊旅行でもしたような気分だったかも知れません。

無事に実家に到着し、持って行ったお寿司を食べ、私は母のベッドで少し休んでから、また2時間かけてうちに帰ってきました。

いつもは一人で過ごすこの家

昨日ばかりは賑やかでした。

真新しいこの家では、母や兄にはタバコは絶対吸わせないと思っていたけど、家に着いた途端に母も兄も「一服吸わせてくれ」ですと。

まぁ、あんまりガミガミ言ってもせっかく楽しみにしていた母のお泊り体験

キッチンの換気扇の下でならと条件をつけると、二人はこれ幸いに何度も何度も換気扇の下に足を運んでタバコを吸っていました。

昨日母たちがうちに来てから寝る前までに、用意した灰皿は二人の吸い殻でてんこ盛り

まさか、こんなにたくさん吸うなんて思っていなかった私は、副流煙で気分が悪くなり頭痛薬を飲む始末になりました。

「頭が痛いから、ここでタバコを吸うのはもうやめて欲しい。」と言うと、昨晩は二人共ピタッとやめてくれました。

だけど、今朝になったら元の木阿弥

母曰く「わしらはニコチン中毒だから仕方がない」とあっけらかん。

お金がないと言って、毎日19円のソフト麺を食べていると言うぐらいなら、タバコをやめて食費に充てたらどうだと喉の奥から出かかった言葉を今朝は飲み込みました。

母たちを実家へ無事に送り届けたあと、この家に帰り、廊下を通ってまずはキッチンに入りました。

母たちが今朝吸ったタバコの吸い殻が、換気扇の下にそのままになっていました。

つわものどもが夢の跡

つい数時間前まで確かにここに居た母と兄

今頃実家で母と兄は、ガミガミ小うるさい私の悪口でも話しているかも知れません。

母たちが使った客布団は、明日の晴れ間を見計らって干してから片づけます。

母は今回のお泊り体験のあと、「やっぱりわしはこんなキレイな所にはよう住まん」と言っていました。

兄は兄で「母がお前と一緒に住むようなことになればケンカの毎日になる」と言っていました。

ごもっともです。

そう来ると思っていました。

さて、肝心の母の呼び寄せ問題

本番はあるのでしょうか

今日の私の感慨深い思いに対して、母と兄はいたって現実的なご意見です。

それが的確な答えかも知れませんが、ちょっと寂しい気もしました。